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外国人患者受け入れの課題と対応のポイントとは?

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目次

医療ツーリズムを含む訪日外国人旅行者や在留外国人数は長らく増加傾向にありました。直近では新型コロナウイルスの影響により一時的に大きく減じているものの、依然医療現場では外国人患者への対応が急務となっています。

1. 外国人患者受入に関する課題について

外国人患者と言っても様々な方がいらっしゃいます。医療費が100%自費の方、日本語でのコミュニケーションが困難であるため通訳が必要である方等、一定の体制整備が無くては円滑な受け入れができない等の問題が医療機関において喫緊の課題となっています。

言語の違いによる意思疎通の課題に対しては、厚労省の「外国人患者受入れ体制整備支援事業実施要綱」等により医療通訳者や医療コーディネーターの配置、院内案内表示等の多言語化整備等が進められてきましたが、依然として課題は残ります。厚労省の「医療機関における外国人患者の受け入れに係る実態調査」では過去1年間で約80%の病院が外国人患者を受け入れた経験があることを示していますが、同時にこの調査でこれまで想定しなかったトラブル、また顕在化していなかった問題も明らかになってきました。

 *厚労省「医療機関における外国人旅行者及び在留外国人受入体制等の実態調査結果報告書」より(平成30年8月)

<トラブル・問題>

  1. 言語コミュニケーション上のトラブル
  2. 金銭、医療費に関するトラブル
  3. 宗教、思想、習慣などの相違に起因するトラブル
  4. 未収金、訴訟などのトラブル
  5. 時間、労力

2. 課題別対応のポイントについて

実態調査におけるトラブル・問題上位の「金銭、医療費に関するトラブル」「宗教、思想、習慣などの相違に起因するトラブル」について、その対応等について一部ご紹介します。(T-4POMedicare注意事項資料より監修:聖路加国際病院国際係原茂順一氏) 

1) 金銭、医療費に関するトラブル

  • 外国人患者は日本人と比べて本人確認が難しい可能性があります。身分の偽装による診療トラブルの防止や、万が一、患者へ連絡が必要になった場合の正確な連絡先の把握のために、受付時の本人確認を徹底する必要があります。
  • 写真つきの公的機関発行身分証明書(パスポート等)で本人確認を行いましょう。  その際、あわせて在留資格と期限も確認しましょう。  
    ※診療のために在留期限超過とならないよう注意が必要です。  
  • 保険の加入状況の確認は外国人患者を診察する際にとても重要です。日本の公的医療保険に加入していれば通常通りの保険請求が可能ですが、未加入の場合は医療費が全額自己負担になるため、いっそう入念な確認が必要です。  
  • 診療を始める前に、日本の医療機関での一般的な診療の流れと、診療後に医療費の請求を行うことを説明しましょう。また、自院での可能な支払い方法を説明しましょう。
  • 患者には概算医療費の提示を必ず行い、あらかじめ同意を得ておきましょう。

2) 宗教、思想、習慣などの相違に起因するトラブル

  •  外国人患者の中には、様々な宗教上・習慣上の考えの人がいます。そのため診療の際には事前に患者の要望を確認し、自院で対応できる場合には対応する一方で、対応ができない要望については、あらかじめその旨を患者に説明し、納得してもらった上で診療の継続や中止の判断を患者自身にしてもらうことがトラブルを防ぐために大切です。
  •  外国人患者の習慣には日本の習慣との違いがあり、その違いに対して一定の配慮が必要な場合があります。
  • その違いについての認識を持つことはもちろんですが、自院での対応方針を決め、事前に対応の可否につき患者に説明しておくことでトラブルやクレームを防ぐことができます。例として、
  1. 自分のことを自分で判断しない患者もいるため、診療状況に応じて、患者さんが要望する親族友人に同席してもらうと診療がスムースに進むこともあります。
    例) 家族を重視する文化では、重要な決定は家族が行います。また、男性優位の文化では、妻や子供の医療上の最終判断は夫が行います。
  2.  家族が患者本人の余命に関わる診断を隠すことが多く、また患者本人も生死にかかわる診断を直接聞きたくないケースもあります。そのため、誰に病状を伝えて欲しいかを事前に患者に確認しておくと診療がスムースに進みます。
  3. イスラム教の患者の場合は、出来る限り同性の医療者(医師のみならず、看護師、コメディカルも含む)が担当するようにしましょう。女性患者であれば女性医療者が、男性患者であれば男性医療者が担当すると診療がスムースに進みます。

3) 未収金、訴訟などのトラブル

  • 万が一、患者さんが医療費を支払う前に帰国してしまった場合、振り込み手数料も高額であるため、そのまま未収金となってしまうケースもあります。未収金への対策として、自治体による未払い医療費の補填制度が挙げられますが、根本的な解決にはなりません。支払いに関するトラブルが発生すると、医療費の支払いを求めて外国人患者の母国の裁判所に訴訟を起こすこととなり、煩雑な手続きが発生します。また、多額の裁判費用を要することも想定されます。加えて、法的手段によりすべて解決できるとは限りません。外国人患者が帰国する前に治療費を精算することが大切ですが、帰国日までを把握することは難しいため、来院中に精算を済ませることで未収金のリスクを減らすことができます。また、事前に患者の支払能力を確認するとともに、治療費を前払制にする、もしくは預かり金を受け取ることで未然のトラブル防止につながります。
  • 海外では治療費が尽きれば治療が打切りになるのは一般的です。しかし、日本では、外国人患者の支払能力を確認せずに積上診療(特に検査)を行い、その結果、治療費が概算費用より増大し、患者の納得を得られず治療費を回収できないことやクレームにつながる可能性もあります。
  • 概算費用を提示するときに、想定できる合併症等の治療費もあわせて計上し、患者に事前に説明するとともに、事前提示した金額を超過する可能性があるときには速やかに患者と相談し、その先の治療を進めるか否かの判断を仰ぐ必要があります。

3. 最大課題言語コミュニケーション上のトラブル対応

厚労省の「医療機関における外国人患者の受け入に係る実態調査」の中でも最も大きな課題である言語の問題に対し、外国人患者と医療スタッフがスムースで安全な診療を行える自動通訳システムの実証研究に取り組んでいる病院の事例を紹介します。

【事例研究】聖路加国際病院医療現場向け自動翻訳システムT-4POMedicareの実証共同研究

2020年4月に学校法人聖路加国際大学と株式会社ロゼッタは医療向け自動翻訳システム:T-4POMedicareの実証共同研究を開始しました。

 聖路加国際病院にて、患者サービス課国際係の医療通訳スタッフが同席して診療を受ける予定の患者のうち、主に中国語とロシア語を話される方を対象として、ロゼッタ社の自動翻訳システム(T-4POMedicare)を用いた診察を実施しています。医療従事者と外国人患者の発話と翻訳内容を日本語と外国語で、骨伝導イヤホンから聞くことができ、タブレット、スマートグラス上にも文字で表示されるシステムとなっています。受付や会計、診察室での会話はもちろん、内視鏡検査の時のように「手が離せない・画面を見られない」といった状況でも、病状や医療行為などについて適切に理解でき、円滑なコミュニケーションができることを評価し、それらが医療コミュニケーションの向上と診療の効率化に寄与することの検証を行います。

通訳機能を備えたデバイスは既に同院でも利用されていますが、本システムでは、通訳精度の向上のみならず、診療内容の記録やハンズフリーでの利用などの利便性向上が図られています。外国人患者の不安や医療スタッフの負担が取り除かれることにより、診療の質向上にも繋がると考えられます。

また既知でなく理解できない言語での診療コミュニケーションでは、いつでもどこでも24時間使用できる本自動通訳システムは非常に有用なツールと考えられます。

聖路加国際大学とロゼッタ

医療現場向け自動翻訳システム(T-4PO Medicare)の実証共同研究について」より



<T-4POMedicare自動翻訳システムの特徴>

  • 患者の不安を取り除き安心と信頼の医療を提供
  • 病院スタッフの言語コミュニケーションに対する負担の軽減
  • 24時間365日いつでも対応
  • 操作が簡便
  • コスト削減に貢献

新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種が始まり、近い将来訪日外国人旅行者等が以前の様に戻れば、病院の外国人患者受け入れ体制は喫緊の課題となりますが、今から取り組んでいけば十分な対応が可能です。

コロナ収束後の医療環境を見据えて今から外国人患者受け入れ体制を構築していくことは非常に重要なことです。

 *外国人患者受入整備に対する国の助成金情報は、厚労省ホームページよりご確認ください。

 

記事提供者
㈱ロゼッタ

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