医療機関内自動運転モビリティサービスについて

自動運転モビリティサービスは、広い医療機関内において自身で目的地まで歩くことが困難な患者やその同伴者に快適で安全な移動手段を提供することにより、医療機関内の環境を整え医療サービスの向上を図るものです。あわせて、自動運転サービスの提供は、今まで移動サポートに携わっていた医療機関スタッフの負担も軽減します。
1. 医療機関内の移動についての状況と課題
歩行が困難な患者とその同伴者が医療機関 内を移動する主な手段として車椅子(手動/電動)があります。外来患者の場合、大抵は自身で使用している車椅子を使って移動していますが、最近では高齢者が夫婦で来院し、一方が車椅子を押すという高齢者同士の介助も見受けられます。短距離は歩行可能だが長距離の歩行に不安を抱える外来患者の中には、来院後に医療機関の車椅子を借りるケースもあります。入院患者の中には、検査やリハビリテーションのために、指定された部屋まで移動する手段として車椅子を使う人もいます。このように、入院・外来にかかわらず医療機関内で車椅子を使う方は少なくありませんが、医療機関の車椅子を借用するには、受付での申請や車椅子を押す人が必要となるなど、時間や手間がかかるケースもあります。また、入院患者の車椅子移動においては、例えば作業療法士や看護師が、リハビリテーションや検査の後に患者を車椅子で部屋まで送り届けるなど、本来の業務以外に時間を費やすこともあります。また昨今のコロナ禍では、消毒の手間やソーシャルディスタンスの確保といった課題もあります。
2. 自動運転モビリティサービスとは
自動運転モビリティサービスとは、特定の一つの地点を起点(スタート地点)とし、あらかじめ設定したその他の複数地点(目的地/ゴール地点)とを、自動往復運転するサービスです。自動運転モビリティサービスの利用は簡単です。スタート地点にて機体に乗車した後、機体に設置されているタブレット端末にあらかじめ設定されている複数の目的地から希望する場所を選択します。その後スタートボタンを押すと自動運転が開始します。目的地に到着後、患者が降車すると自動返却が開始され、機体はスタート地点へと戻っていきます。本サービスの提供により、医療機関スタッフのサポートを必要とせず、パーソナルモビリティを使って自身の操作で医療機関内の目的地まで移動することが可能となります。長距離歩行に不安のある患者や、足腰に障害がある患者など、自身で目的地まで移動するのが困難な方に対し、快適に移動する手段として活用することで患者の心理的・身体的負担の軽減を図るものです。また、患者が自動運転により目的地まで移動することで、医療機関スタッフの作業負担軽減を同時に達成し、医療サービスの向上も目指します。自動運転モビリティサービスのシステムは、自動運転・衝突回避機能を搭載したパーソナルモビリティが、あらかじめ収集した地図情報とセンサー群で探知した周囲の状況を照らし合わせながら自動走行するシステムです。ゴルフ場のゴルフカートのように、地面にセンサー等を埋め込むといった、施設内に工事を要するものではありません。
3. 自動運転モビリティサービスのメリット
1) 医療機関側
- 医療機関スタッフによる車椅子搬送の作業負担削減、ソーシャルディスタンスの確保
- 医療機関スタッフに替わり、複雑な院内の道案内の役割
- 最新かつ快適な医療機関内の空間の提供による、施設利用満足度の向上
2) 患者側
- 医療機関内で選択された目的地まで歩行することなく移動できることによる、身体的負担の軽減
- 複雑な医療機関内を案内なしで目的地まで移動できる、コミュニケーション負担の軽減
- 車椅子を押してもらうことに対する心理的負担の解消
4. 自動運転モビリティサービスの活用ケース
1) 外来病棟
- 正面玄関や総合受付前などの患者が必ず通る箇所を起点(スタート地点)に設定
- 診察室や検査室など患者が目的とする複数位置を目的地(ゴール地点)に設定
- スタート地点とゴール地点の往復自動運転サービスを実施
2) 入院病棟
- リハビリテーションルームや検査室など、患者がよく利用する箇所を起点(スタート地点)に設定
- 病室の出入口を目的地(ゴール地点)に設定
- スタート地点とゴール地点の往復自動運転サービスを実施
5. 導入した医療機関および利用した患者の声
1) 導入した医療機関の声
「新しくなった病棟と最新鋭の機体との一体感は素晴らしい」「たまにサービスエリアを通ると、多くの患者が乗車していることから人気があることがうかがえる」「サービス内容に満足しており、医師や看護師、病院スタッフの中でも話題に上がっている」「ぜひ他の病院にも紹介していきたい」など、好評の声を頂いています。
2) 利用した患者の声
実際に利用された患者の7割は、車椅子を利用していないが長距離の歩行を困難に感じるシニア層で、利用者からは、「すごく助かった(楽だった)」「玄関からも利用できるようにしてほしい」「台数を増やしてほしい」「入院時の検査に利用したい」「今後、病院に来る際には毎回利用したい」「担当医の勧めで利用した」「麻酔をしてふらふらしていたので助かった」などの声が聞かれた。
6. まとめ
医療機関内でヒトを搬送する自動運転モビリティサービスは、患者に医療機関 内の移動の新たな選択肢を提供する最新のサービスです。患者の施設利用満足度を向上させるだけでなく、看護師や医療機関 スタッフの負担も削減できます。医療現場のデジタル化、自動化などの観点からも注目されています。
<自動運転モビリティサービス「WHILL」について>
1)導入までの流れ(※デモ実施期間等にもよるが、商談から実運用まではおよそ2カ月)
- 商談および弊社による現地訪問
- 該当施設の特殊カメラによるスキャニング
- デモ機準備およびデモ走行実施
- デモ走行結果の報告およびレンタル契約等の締結
- 実運用の開始
2)導入に際して必要なもの
- サービス前後に機体などの準備・メンテナンスをするスタッフ
- PCまたはタブレット(付加サービスをご利用される場合)
- 機体やバッテリーを保管するためのスペース
3)導入にかかる費用:施設の広さやサービス内容によって異なるが、主に発生する費用項目は以下の通り。
- 初期設置費用(院内のスキャニング、自動運転用地図の作成等)
- デモ費用
- 導入後の月額サービス料
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