
【事例:倉敷中央病院】これからは地域のIT最適化が目標①

【医療機関のIT活用事例】2024年医師の働き方改革の施行が迫っており、医療現場でもITを有効に活用した取り組みに注目が集まっています。本記事では、ITを駆使して仕事の効率化を進める倉敷中央病院の取り組み事例をご紹介します。
【事例:倉敷中央病院】これからは地域のIT最適化が目標①
藤川敏行
(以下敬称略)
はじめに自己紹介をお願いします。
藤川▲倉敷中央病院の藤川と申します。私の所属する情報システム部は基本的に院内のITについて対応しており、スタッフ数は18名です。一部で内製の開発もありますが、基本的には市販の医療情報システムのパッケージソフトを導入して、その運用保守を中心に行っています。私は入職してからずっと情報システム部に在籍していますので、他部署では通用しないかもしれません(笑)。
それだけ1つの仕事を極めているということですね。まずITを活用した取り組みとして、これまで倉敷中央病院がIT活用という視点でどのような道のりを歩んできたか、変遷についてご紹介ください。
藤川▲倉敷中央病院は、かなり古くからコンピューターを使っています。もともと1960年代に病院の経営状況が悪化し、加えて建物の老朽化など、さまざまな課題や経緯がある中で、当時の事務長が経営を立て直すための1つの方策として、「これからはコンピューターの時代が来るだろう」と、1970年に外部委託をするところから始まりました(資料1)。
当時はまだ大企業でも汎用機を導入していない時代だったと思いますが、当院では1972年にNECの汎用機を導入してコンピューター技術を使って経営改善を図り、今でいうDXに近い形で取り組んでいたと想像されます。医療業界においてコンピューターを適用した実績が認められて、1977年には当時の通商産業省から病院としては初めて表彰も受けました。
その後も汎用機を活用しながら、内製でも開発を進めてきたという経緯の中で、私たちも入職しました。システム開発が中心だったのですが、2000年代になると「電子カルテ」というキーワードが出てきましたので、その辺りからNECのパッケージソフトに切り替えるという大幅な方針転換を行い、以降、内製での開発は縮小しながらパッケージソフト中心のシステムを構築してきているという流れです(資料2)。NECとはかれこれ40年の付き合いになります。
倉敷中央病院としてのモデルが出来上がっているというイメージでしょうか?
藤川▲1978年頃に医事会計システムをNECと共同開発しましたが、それが今でいう「MegaOak IBARS(メガオークアイバース)」の原型です。1978年に開発後、NECはどんどん汎用機のパッケージ化を進めていき、その一方で私たちは内製化に突き進んでいったのですが、2002年くらいに再びパッケージソフトへの切り替えということで一緒になったという変遷があります。
ベンダーはずっとNECですが他のベンダーを考えなかったのでしょうか?
藤川▲自社がメインで使っているベンダーについてはそのシステムの欠点も把握していますから、他社のものが良く見えるという風潮がないわけではありません。私たちも2000年前後に次期システムについて検討した際、どこのベンダーとタッグを組んで開発をしていこうかと、一度コンペも行っています。そのうえで結局NECとタッグを組むことになり、今に至っています。
18名もの人員がいる情報システム部はなかなかないと思いますが、皆さんは普段どのようなお仕事をされているのでしょうか?
藤川▲例えば、電子カルテにも6~7年に一度更新のタイミングが訪れますが、その周辺にもいろいろな部門のシステムが動いていて、小さいものを含めると80くらいが常時稼働しているという状況です。
それらがそれぞれ更新を迎えるタイミングがありますので、今現在ですとICUなどの集中治療を行う重症者の部門システムが更新の時期を迎えていて、11月最終週のリリースを目指してベンダーと調整を行っています。
当然、更新のタイミングでは従来のベンダーで更新するものもあれば、他に新しくて良いものがあればそちらに更新していくという選択をすることもあります。複数のシステムが稼働していますので、日々の仕事としてはそれらの運用保守が中心になります。
また当院では、PCなどのいわゆる情報基盤の部分の管理を全部職員で担当していますので、18名という大所帯になっています。電子カルテを導入したベンダーにPCや各種セットアップをアウトソースしている病院もあるかと思いますが、当院では、そうした部分を全部私たちがやることでITガバナンスを効かせようと努めています。
情報システム部員の方々が保有している資格などはあるのでしょうか?
藤川▲当院の職員は、一部を除いて経済産業省の情報処理技術者資格を有する人がほとんどです。
医療DXの先進事例として、藤川さんがさまざまな媒体でご紹介されているのも目にしています。最近、院内で取り組まれたトピックスをいくつかご紹介いただけますか?
藤川▲頭に「医療」とだけつけて「医療DX」とか「医療情報システム」とか言われますと何か特別感が醸成されますが、私自身はそんなに特別ではないと思っています。最近、医療DX関連のセミナーで登壇する機会も多くありますが、そうした中でご紹介できる取り組みとしては、企業との共創活動に注力しているということでしょうか。例えばNECとはAIを活用して検診結果を予測するとか、㈱SCSKとは医師の働き方改革に向けた取り組みの一環として医師用タブレット端末を一緒につくるということをやっています。
逆に病院の院長先生や上層部からの要望とかも多く受けているのでしょうか?
藤川▲倉敷中央病院に限らずどこの病院もそうだと思いますが、中期計画が策定されますよね。当院では今、倉敷地域で「地域医療エコシステム」を確立することを目指しており、私たちはその中でプラットフォームづくりを中心に行っています(資料3)。例えば、このプラットフォームの中に画像の共同利用ができる仕組みを構築することで、倉敷のすべての医療機関が恩恵を得られるような取り組みにしていきたいなど、いろいろなことを考えてやっています。
→ 【事例:倉敷中央病院】これからは地域のIT最適化が目標② へ続く
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●収録日:2021年10月20日
●施設概要
病院名:公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院
所在地:岡山県倉敷市美和1-1-1
電 話:086-422-0210
病床数:1,172床
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●転載元
医事業務 No.618(株式会社産労総合研究所 2月1日発行)
特集1 仕事の効率化を図る 《IT編》
ITを有効に活用して医療従事者の働き方を変える
《医事業務》
https://www.e-sanro.net/magazine_iryo/iji/
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