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【事例:倉敷中央病院】これからは地域のIT最適化が目標③

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【医療機関のIT活用事例】2024年医師の働き方改革の施行が迫っており、医療現場でもITを有効に活用した取り組みに注目が集まっています。本記事では、ITを駆使して仕事の効率化を進める倉敷中央病院の取り組み事例をご紹介します。


【事例:倉敷中央病院】これからは地域のIT最適化が目標③       


公益財団法人 大原記念 倉敷中央医療機構 倉敷中央病院 情報システム部 部長

藤川敏行


これからは地域のIT最適化が目標① <リンク予定>

これからは地域のIT最適化が目標② <リンク予定>

(以下敬称略)

さまざまなシステムを導入するにあたって、他の病院のシステムを参考にするといった横での情報交換などはされているのでしょうか?

藤川▲もちろんです。私たちも長いこと携わっていますので、業界で横のつながりもでき、他の病院から貴重な情報をいただくこともありますし、逆に当院の情報を共有することもあります。

そのような中で、藤川さんの視点では電子カルテの今後の行方はどうなると思いますか?

藤川▲やはり医師の話を聞いていると、「海外の製品は優れていて」という声が多いので、一度、何人かで展示会などに行って実物を見たりもしたのですが、実はあまり変わらないんですよね。では何が違うかというと、結局、診療報酬の仕組みにかなり引きずられているということなんです。

電子カルテもシステムですから、診療報酬の仕組みが変わらない限り劇的に良くなることはできない。最終的にはApple社のSiri(シリ)のような音声入力でうまくカルテを作成してくれるような時代が来るようにも思いますが、薬事法などで現時点ではまだ認められていないんですよね。AIを使った診断というものですらはばかられるような中で、電子カルテが劇的に良くなるとは思ってはいません。

ですから、電子カルテ自体を良くすることも重要なのですが、それよりは電子カルテ周辺領域をなんとか努力して良くしていくということを意識して取り組んでいます。

それはなかなかない視点ですよね。

藤川▲そうかもしれません。でも多分そのほうが、先生方が受けられる恩恵はずっとあるように思います。例えばRPA(Robotic Process Automation)やいわゆるクラウドを積極的に使うとか、当院では医師にはマイクロソフト社の「Office 365 E3」のライセンスを付与し、自宅でもできるようにしています。その点は、先生方が他の病院との違いも感じられる部分ではないかなと思います。

オンライン診療についてはどうですか?

藤川▲オンライン診療は当院でも行っており、病状説明などはかなりオンライン化されています。私が「病院の不思議」だと思うことの1つに、電子カルテなどを中心とする医療情報系ネットワークを安全のためにインターネット接続と切り離している病院が多くあると思います。医療情報を扱う特別な職種だからインターネットと切り離すという一方で、平気でZoomなどを使っていたりもする。少しバランスが悪いのではないかと思うのです。電子カルテの稼働当初から今のセキュリティベースになっているゼロトラストをイメージしながら、私たちは積極的に侵入してきそうなウイルスをどうブロックしていくかという視点で考えてきました。

例えば、当院では院長ですらPCの壁紙すら変えることはできないようになっています。院長がログインすると、院長のシステム上の扱いはシステム管理者ではなく一般スタッフと同じです。ランサムウェアの被害にあった時でも、アクセス権をすべて管理者として入れるようにすれば広がりますが、一般ユーザーの権限で広げられるのはここまでという抑止をしっかりする。そうすることでコストパフォーマンスが上る為、インターネット接続用と電子カルテ用とでシステムを分けてわざわざ使い勝手を落とすようなことをして一体何のメリットがあるのかという思いをずっと持っています。

PCの台数としても相当ですよね?

藤川▲院内には約3,300台のPCがあります。ですから、いかに簡単にPCを管理できるかということを考えると、院長が壁紙を変えられるような設計にしていたらいけないんですね。そうした設定は私たちシステム部門しか変えられないとすることでITガバナンスを効かせています。

システムにかかわるところでもう1つ、院内ではPHSがスマホにシフトしていたりしますか?

藤川▲当院ではPHSのままです。もちろんMicrosoft Teamsはすべての職員が使えるようになっていますので(資料4)、院内コミュニケーションはメールからチャットベースにシフトしようと思っていますが、音声通話についてはすぐにPHSをスマホに変えないといけないのかどうか疑問です。これはDXを推進することが目標となってしまうようなことと似ている話なのですが、私たちの目標はスマホ化することではなく、あくまでも売上向上や患者に対する医療の質の向上です。ですからPHSが製造終了などにならず、使えるところまで使えるのであれば、経営的視点からそのほうがよいと判断しています。時代遅れと言われることもありますが、PHSをやめてWi-Fiを整備することで、例えばアンテナの調節など費用的にももったいない部分がありますし、スマホになることで「どういうことができるのか」という部分まで考えないと、「配ったはいいが何をしてよいか分からない」という状況にも陥りかねません。

 当院ではBYOD(Bring Your Own Device:従業員が所有する私物デバイスを業務に使用すること)を一部認めていて、医師も含めて自分のスマホをオフィスで使えるようにしています。PHSは使えるだけ使って、きりの良いタイミングで次のデバイスに切り替えるほうがいいと思っています。

今後の倉敷中央病院におけるIT視点での課題は何でしょうか?

藤川▲私たちは病院の中のシステムの最適化をずっと考えてやってきましたが、地域の中核的病院で働いている以上は、地域のITの最適化も考えていきたいと思っています。例えば医事会計システムにしても、200床ほどの規模の病院が1,000万円近くのコストをかけて購入するとなるとものすごく大変ですから、当院のシステムを共同利用する形で実現できないかなということも考えています。

NECともディスカッションを進めていますが、その実現にはもう少し時間がかかりそうだと思っています。医事会計システムや電子カルテをどうしても買いたくて買っている病院は少ないと思うんです。買わないと医師が来ないからなどの理由で無理して導入されている病院が多いかもしれません。そうであれば、みんなで一緒に使えたほうがいいんじゃないか。そういうことで、手始めにPACS(医療用画像管理システム)を共同利用しようという発想で取り組みを始めています。それがうまくいけば医事会計システムに拡張し、最後には電子カルテが一緒に使えるといいなというイメージでいます。

最後に倉敷中央病院の委員会活動で新しいIoTを導入するにあたって最も気になる点や必要となる手順がありましたら教えてください。

藤川▲IoTの導入も、それ自体は目的ではなくて、本当の目標は実はほかにあるんですよね。当院では、毎年院長から方針が出ますので、それに対してうちのセンターでは、BSC(Balance Score Card)手法を取り入れていて、IT用の戦略マップを描いています。そのうえで、特に重点的に取り組むアクションプランと照らして合致しているかどうか、またIoTを導入することで目標達成への道が近くなるかどうかを検証し、もし目標に近づくようであれば、もちろん導入を検討します。

 後は導入するものが増えてきた場合ですが、一応予算がありますから、予算枠内に収まるように私たちがコントロールしながら委員会の中で優先順位を決めてもらいます。そのうえで、予算に収まるように年度内で調整するということも大切だと思っています。

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●収録日:2021年10月20日

●施設概要

病院名:公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院

所在地:岡山県倉敷市美和1-1-1

電 話:086-422-0210

病床数:1,172床

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●転載元

医事業務 No.618(株式会社産労総合研究所 2月1日発行)

特集1 仕事の効率化を図る 《IT編》

ITを有効に活用して医療従事者の働き方を変える

《医事業務》

https://www.e-sanro.net/magazine_iryo/iji/

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記事提供者
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産労総合研究所

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