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【補助金・助成金に関する基礎知識】補助金・助成金に関する不正受給の落とし穴

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目次

【補助金・助成金に関する基礎知識】新型コロナウイルスによる影響で医療機関の収益が大幅に減少する中、補助金を如何に漏れなく申請し、最大限に活用できるかは、病院事務職の手腕によるところが大きいのではないでしょうか。そこで本記事では、補助金・助成金に関する不正受給の落とし穴について紹介致します。

※掲載情報は2021年12月時点のものとなるため、今後変更される可能性がございます。


【補助金・助成金に関する基礎知識】補助金・助成金に関する不正受給の落とし穴

Kollectパートナーズ法律事務所 代表弁護士 

佐藤 亮

クライアントの99%が事業会社や医療機関の法人であり、コーポレート法務、契約ごとや契約に関する紛争、コンプライアンスを主軸に、医療機関を含めたM&Aや事業承継などでのコンサルテーションも含めた業務を行っている。医療機関のクライアントも多く、顧問先も複数ある。日本施設基準管理士協会の運営団体の理事も務めており、医療機関との付き合いも多い。


1.補助金と助成金の違い

補助金と助成金はいずれも国または地方公共団体から支給され、返還の必要がないという点では同じです。しかし、予算が決まっている補助金は予算がなくなると期間の途中であっても終了すること、また補助金には審査があるため要件を満たしていても審査を通らないケースも結構あるのに対し、助成金は基本的に要件を満たしていれば支給されるという違いがあります。補助金の審査は通りにくく、突破率は平均4~5割弱とそれなりにハードルがあります。ハードルがあるがゆえに、それを越えようと無理をして不正受給につながってしまうという背景があります。

2.病床確保料を不正受給する問題

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)対策関連ではいくつもの補助金が支給されましたが、その中で最近特に問題視されているのが病床確保料に関する補助金の不正受給問題です。新型コロナに関する確保病床に関するものには、重症者用1床につき最大1,950万円、重症者以外1床につき最大900万円の補助金が付きます。ただ、入院患者がいない場合は、補助金・助成金が支給できない一方で、入院していない間も病床を確保しておかなければならないため、その間は病床確保料が支給されることになっています。ところが、病床確保料を受け取り「すぐに受け入れ可能」と申告して新型コロナ患者のための病床を確保しているにもかかわらず、実際に新型コロナ患者が来ても受け入れないという事態が発生しており、最近では「幽霊病床」と報道されているように問題視されています。受け入れない理由はいくつもありますが、受け入れないのは問題だということで、令和3年10月に新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)交付要綱が改正されました。これは幽霊病床の存在を受けて、補助金交付要綱(資料1)の中に、こうした問題に対する対策が設けられたという主旨の改正です。

具体的には、「病床の確保に関して都道府県から新型コロナ患者の受け入れ要請があった場合は、正当な理由なく断ってはならない」という項目が追加されました。また、「病床確保料について、留意事項が適切に実施されていない場合には、都道府県から病床確保料の交付の執行停止を行うことがある」とあり、つまり、「もう病床確保料は払わない」と言われるということです。さらに同じように「留意事項が適切に実施されていない場合は、病院確保料の返還を求められる」ということが規定されました。最初の「正当な理由がなく断ってはならない」という部分は、「正当な理由があると断れる」ということですが、何が正当な理由かは明らかにされていません。これは明らかにしないのが一般的です。なぜなら、個別具体的に判断していくという主旨の文言なので、あえてそこで具体化はしません。しかし、例えば「新型コロナ患者が来ても受け入れられるだけの人員体制が整っていないから受け入れなかった」という事情が正当な理由になるかについて、申請した当時は体制が整っていたが、その後たくさん離職者が出てそうなったのであれば、そもそも事情が変更して実際に受け入れられない体制になった時点で申請を取り下げなければなりません。それをやらずに、正当な理由になるかというと、要請の直前に大量に離職したというような事情がない限りは、正当な理由にはならないと考えます。

このように、新型コロナ患者を受け入れられない事情はそれぞれあるので、これがあれば正当な理由になるというのはなく、個別具体的に対応せざるを得ないというのが現状です。病床確保料に関する規定での「留意事項」には、受け入れ体制が整わなくなったなど、補助金を受給できる条件を満たせなくなった時には「補助金を取り下げてください」「自主返還してください」ということが書かれています。それが実行できていない時は、執行停止や返還を命じられるということになっています。

3.過去の補助金不正受給の事例

新型コロナ関連の不正受給は実際に事例もありますが、どの病院でも自主返還で対応されており、返還を命じられるところにまでは至っていません。補助金の不正受給は、新型コロナ以外にも昔から多くありました。一例としては、超音波画像診断装置等の機械装置の購入費用に関して、国と都道府県から支給されていた補助金3,000万円を不正受給していたケースがあります。補助金の交付要件に「入札」が記載されていましたが、実際は未入札にもかかわらず入札をしたことにして書類を作成し補助金を受給しており、これについては不正受給とみなされ、加算金つまりペナルティとして4,000万円の返還になりました。

ほかにも、診療所運営費に関する報告書に人件費を水増し計上していたというケースがあります。これも虚偽の書類の作成ということになりますが、この事案では水増しで加算金を加えた金額と不正になっている部分の受給金額を返還しました。

このように不正受給は頻繁にありますが、発覚すると自主返還で対応することがわりと多く、なかなか返還命令まで出るケースはありませんが、報道されると病院名も含めて名前が出るので、そういう点でレピュテーションリスク(評判が悪化する危険)はあります。

4.不正受給の類型

(1)偽りその他不正の手段による申請

これは、事実をありのまま申請してしまうと補助金を受給できないということが事前に分かっているので、実態と異なる書類を作成して補助金を受けようとするパターンです。具体的には、補助事業の実施期間が決まっていることが多いので、日付を改ざんして申請をする補助対象経費の水増しなどがあります。補助金は上限金額が決まっており、2分の1や3分の2までという上限があるため、上限いっぱいまでもらうためにはそれだけ多くの費用がかかったことにすればよいということで、実際かかった費用よりも多額の費用を書くという形で不正が行われます。これが偽りその他不正の手段による申請が起きるケースです。

(2)他の用途への無断流用

補助金は目的に合った事業を支援するために交付されるものであるため、使途が決まっている場合もありますが、これは申請した用途と異なる用途に無断で使用するケースです。

(3)外部コンサルタントの利用

最近は、外部コンサルタントを利用して補助金を申請するケースも増えており、詳しい人にやってもらったほうが、もれも少なく審査に通る可能性も上がるという点で経営判断としては正しいともいえます。しかし、そうして積極的に補助金を取りに行った結果、補助金の要求になっているがために、もともと存在しなかった書類や実態と異なる書類を作成して提出してしまうというケースもあります。外部コンサルタントに言われて作成しているがゆえに、当事者として悪いことをしているという認識を持ちにくいケースもあります。またコロナ禍で補助金・助成金が増えており、金融機関からの融資を受けるにあたっても外部コンサルタントを利用する場合が増加していますが、外部コンサルタントが申請書から補助金申請代行を委託し、着手金を支払わせたのにその後連絡がつかなくなるという被害を受ける事案や、案件を進めてくれずにトラブルに発展するという事案も増加しています。外部コンサルタントを利用するときには、医療機関側でもある程度コントロールするように管理しなければいけません。丸投げするとリスクがあります。

5.不正受給の法的リスク

起こりやすい不正受給の類型ごとに見ていくと、「偽りその他不正の手段による申請」については虚偽申請として、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下「補助金適正化法」)29条1項に「偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受けたもの」ということで、5年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処すとあります。また虚偽申請に加え、ないものをあるといって国から財物を交付させているため、詐欺罪(刑法246条1項「人を欺いて財物を交付させた者」)も問われ、10年以下の懲役に処されます。詐欺罪との関係では、実際に外部コンサルタントの利用にも関連した事例が結構あります。外部コンサルタントを利用して両立支援助成金を申請したが、そこで必要となる領収書の写しについて、実際は例えば100万円の領収書のものを1,000万円と書き換えて出し、後日、関係検査員の調査で発覚して、当然、助成金は返還、さらにその担当者も労働局に刑事告発されて書類送検されたというケースがあります。

「他の用途への無断流用」という目的外使用についても補助金適正化法30条に記載があり、「他用途への使用禁止という条項に違反して補助金を他の用途に使用したもの」については3年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金となります。ただしこのケースは、だまして交付させたという詐欺とは違うので、詐欺罪の適用は可能性としては高くありません。また、「外部コンサルタントの利用」において、経営コンサルタント等による助言に従ったに過ぎないとしても、医療機関が補助金適正化法、刑法に基づく責任を負う恐れがあるということを知っておいてください。

ほかにも刑事罰以外にどういうリスクがあるかというと、一番典型的なのは補助金の返還です。その多くはもらった額だけではなく、罰金のような形で加算金等の納付を求められます。補助金の返還については補助金適正化法に規定(資料2)がされており、定められた期限内での補助金の返還を命じられますが、加えて補助金の受領日から定められた納付の日まで年利10.95%の加算金を納付することになります。これが罰金に相当します。

また、定められた納期までに払わないとさらに延滞金が発生します。年利10.95%なのでかなり高く、さらに医療機関からするとレピュテーションリスクも結構あり、固有名詞を含めて報道されます。事業者名の公表も、補助金受給に関する要綱に定められることが多いです。あとは再申請の制限があり、5年や3年などまちまちですが、補助金を何年間か再申請できないケースがあります。

6.質疑応答

Q:不正請求はどのようなきっかけで発覚することが多いですか?

A:いくつか端緒はあります。1つは税務調査で、あるいは外部コンサルタントに税務調査が入りその反面調査で医療機関に来るなど、公的な調査が入ることがきっかけで発覚するパターンが多いです。ほかに考えられるのは適時調査などです。これは施設基準の話なので補助金・助成金の端緒にはなりにくいとは思いますが、公的機関が入ったタイミングが最も考えられます。あとは内部告発で、労働者との関係が悪くなり、内部通報で外に出ることもあります。

Q:不正請求にならないための医療機関側の予防策はありますか?

A:補助金・助成金はあくまで税金をもらうという感覚で、もらえないものはもらえません。無理をして取りにいこうとしないことが一番のポイントです。取れるものは積極的に取ったほうがよいと思いますが、取れるものを無理やり広げようとしたり、取れる額を無理やり上げようとしないというスタンスが大事です。

Q:新型コロナ患者を受け入れ拒絶できる正当な理由は何かありますか?

A:何があれば正当な理由になるかは結構難しく、実際に病院の現場で何が起きているかがベースになるので特にアイデアはありません。一時的に人員体制が整わないという理由も、仮に新型コロナ担当人員が全員新型コロナで出勤できないということであれば正当な理由になります。ただ退職して継続的に不在の状況だとなると、それは申請を取り下げなければならないので、正当な理由になりません。個別具体的な事情によるところが多いので、なかなか一概には言えません。

Q:病床確保料の留意事項とは何ですか?

A:留意事項は、自分で基本的には返還をしなければならず、適切に実施されていないと交付の執行停止ということになります。返還しなければならない状況ならば「自ら返還してください」という主旨です。これをやらないと、もう交付しないとか、国に返還を命ずるなどと言われてしまうことになります。

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●収録日

2021年12月3日

●転載元

医事業務 No.619(株式会社産労総合研究所 2月15日発行)

特集1 

病院経営に役立つ補助金の知識

《医事業務》

https://www.e-sanro.net/magazine_iryo/iji/

記事提供者
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産労総合研究所

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