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「施設基準管理士」養成の必要性~なぜ、病院経営には施設基準が重要なのか?~②

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目次

「施設基準管理士」養成の必要性~なぜ、病院経営には施設基準が重要なのか?~②

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著者プロフィール

[経歴]

2006年 5月 江戸川病院から産労総合研究所に転職

2011年 7月 『医事業務』編集長に就任

2018年 1月 一般社団法人 日本施設基準管理士協会を設立

2021年  4月  医事グループ局長に就任

[所属団体]

産労総合研究所 医事グループ局長 兼 『医事業務』編集長

一般社団法人 日本施設基準管理士協会 代表理事

全国医事研究会 理事

NPO法人 日本医師事務作業補助研究会 オブザーバー

厚生労働省労政記者クラブ

4. 「施設基準管理士」とは?

多くの医療現場においては、先輩や上司などから教わったり、市販の本などで自己学習したり、関連のセミナーなどで情報を得るなど、それぞれ独自の方法で施設基準を学んでいます。このように施設基準を専門的に学ぶ機関がどこにも存在しなかったため、日本施設基準管理士協会では「施設基準を体系的に教育する資格制度」を創設しました。それが「施設基準管理士」です。

「施設基準管理士」の資格認定試験はこれまで4回開催し、第1回目は549人と多くの方が受験されました(図表4)。認定試験は毎年1回となっており、2022年度からは受験会場を今までの札幌、東京、大阪、福岡の4カ所以外にも広げて開催する予定です。残念ながら第3回目からは新型コロナウイルスの影響で受験できない方もいる状況ですが、第4回目も2021年11月に無事に終えることができました。今後も「施設基準管理士」が増加していくことが見込まれています。

図表4 過去4年間の受験者数の推移

5. 施設基準の基礎知識

診療報酬の中で重要なルールが「施設基準」です。まず保険医療機関と保険医は地方厚生局に申請を行います。その後、保険医療機関では健康保険法など各種の関連法令に基づき「診療報酬」を算定します。その際、医療機関に勤務する一定の人員、院内の設備などの要件を満たす規定がある場合には、地方厚生局に届け出て初めて点数が算定できます。この届出をするときに求められる要件が「施設基準」と呼ばれています(図表5)。

施設基準には医療従事者の体制に関するものが多くありますが、この「体制」とは人数、職種、資格、経験等を規定したものです。また、院内の設備や構造に関する施設基準も定められています。例えば「設備」とは必要な機材や器具等を規定したもの、「構造」とは面積、寸法等を規定したものとなります。具体的には検査機器、リハビリ・精神科専門療法などで使用する器具であるとか、廊下の幅や病室の大きさなどが細かく規定されています。

図表5 診療報酬の算定と施設基準

6.適時調査の現状

日本の診療報酬体系は健康保険法が1922年に制定され、1927年に施行されてから約100年が経ちました。現在の診療報酬は1958年に導入された「新医療費体系」が基本となっています。そこでは物と技術を分離し、医療行為ごとに全国一律の点数を定め、1点10円で評価されました。その後、1961年に国民皆保険制度が導入され、誰もが医療機関を自由に受診できる日本独特の仕組みとなりました。

そして1994年の10月に「承認制」から「届出制」に移行されました。変更前の施設基準は、書類や現地での確認などを行い、承認を受けてから診療報酬の算定が認められていました。しかし、変更後は施設基準の要件を満たしていたものに対して届出を行い、受理されれば診療報酬を算定することが可能となりました。まさに、これは施設基準の革命といってもいいかもしれません(図表6)。

図表6 適時調査の変遷

承認制の時代は、届出を1つするにも多大な労力と時間を費やし、承認されてからも算定開始まで2~3カ月もかかるケースもありましたが、届出制になってからは大幅な時間短縮等の効果が得られました。しかしその反面、施設基準の届出受理後、適時調査等において運用面などの確認を行うことになりました。

図表7は、実際に2014年度から2019年度に行われた適時調査の件数と返還金額が発生したデータです。件数は2015年度の2,561件から2016年度の3,356件となり大幅に増加しました。2017年度には一時的に返還金額が減ったものの、2018年度からは再び増加する結果となっています。医療機関は一度入金された収益を返すことになると経営的に大きな痛手となります。

したがって、施設基準の管理は病院経営にとって非常に重要な業務といえるでしょう。このように「施設基準管理士」が担う役割は社会的にも大きな存在価値があります。

図表7 過去6年間に実施された適時調査の結果

7.「施設基準管理士」に求められること

医療機関では自院で届け出ている施設基準を適切に管理・運用することが求められます。そのため、施設基準の届出数に関係なく、すべてを把握して総合的に管理できる「施設基準管理士」の育成が必要です。

さらに、「施設基準管理士」は施設基準の知識だけではなく、他部署と連携を図ることも非常に大切な仕事となります。院内の「医師」「看護師」「薬剤師」「他職種」「事務職」に対して施設基準の重要性を伝え、現場を動かす力が求められます。これらの業務を担うため、柔軟な発想と行動力が「施設基準管理士」のスキルとしては重要となってきます。中でも「コミュニケーション」「ファシリテーション」「コーディネート」「オペレーション」などのスキルは「施設基準管理士」の資質としても欠かせないでしょう。

そして、全体的な考え方として「ナレッジマネジメント」を院内で浸透させることも重要です。この「ナレッジマネジメント」とは、病院職員が持っている知識を可視化し、共有することで、院内全体の競争力向上を目指す意味があります。つまり「施設基準管理士」は、施設基準の知識を院内全体に共有し、各部署が持っているものを最大限に引き出し、良い方向に導く役目も担わなければなりません。

資格取得後は、「施設基準管理士」として現場の経験を積み、1つずつ自分自身の技能を向上させていくことが重要です。第1段階から第5段階までレベルアップを図り、最終的には病院全体の管理者として経営に参画できるまで成長することが理想の将来像となります(図表8)。

図表8 施設基準管理士のキャリアアップ

8.おわりに

「施設基準管理士」を取得するには、まず年1回開催される認定試験(毎年11月最終土曜日)の合格が必要となります。年齢・学歴・業務経歴等による制限はありません。申込期間は毎年8~9月の約2カ月間で、協会ホームページまたは郵送で受付しています。

認定試験では、基本的に資料の持ち込みが禁止されていますが、公式テキスト「施設基準パーフェクトブック」のみは持ち込み可能となっています。テキストには、基礎知識、届出や要件、理解促進のための練習問題などが掲載されており、施設基準の「告示」「通知」などを分かりやすく配置した構成のため、実務でも活用できます。

また公式テキストは、認定試験の学習用eラーニング講習の教材とも連動しており、体系的に施設基準の知識を深めることができます。このeラーニング講習は毎年、認定試験前の3カ月間実施され、受講者は好きな時、好きな場所で学習することができますので、「施設基準管理士」認定試験をクリアするだけに留まらず、施設基準の届出管理や基礎的な知識を習得することにも活用できるでしょう。

試験科目は、基礎科目と専門科目に分かれており、基礎科目とは施設基準管理に関する基礎的知識を問うもの、専門科目は施設基準管理に関する専門的な知識・技能を問うものとなります。合格者は登録手続きが完了すると資格証が発行され、さらに会員サポートを受けることができます(図表9)。

図表9 資格取得後の特典

第1期生は、2022年3月31日で資格取得から3年の更新期限を迎えるため、2021年12月に更新講習を受けていただきました。99%の方が更新手続きを行い、講習内容に大変ご満足いただけましたので、アンケートの一部を紹介します。

・施設基準管理士が病院経営のために役立つ資格であることを再確認できた

・施設基準管理士のあるべき姿、具体的な病院内での役割など参考になった

・施設基準取得に向けた取り組み方法や資格の価値向上だけでなく、一般的な仕事の進め方にも役立つ内容だった

日本施設基準管理士協会は、2018年1月に設立してからまだ4年しか経っていませんが、今後はさらなる現場の施設基準教育の発展に向けて事業を拡大中です。新型コロナウイルス感染症の流行拡大により、医療機関の経営はさらに厳しさを増しています。特に、病院経営の視点から施設基準にかかる比重は大きく、日々の管理が重要となるでしょう。病院事務職はもちろん、他の職種や医療機関に勤務する前の学生時代などから施設基準の知識を深めておくと、病院経営者にとっては心強いパートナーとなり得ます。

今後は、多くの方々に当協会の認定資格である「施設基準管理士」を目指していただくことで、医療機関が適切な施設基準管理を行える土壌が構築できることを目指し活動を行っていきたいと考えています。

■日本施設基準管理士協会

https://www.shisetsukijun.org/

記事提供者
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日本施設基準管理士協会

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